NTPサーバの役割と導入のメリットをわかりやすく解説します

システム開発において、システムを安定して運用するためには構成する機器の動作ログを監視する必要があります。

複数の構成機器の時刻を同期し、動作ログの的確さを担保するために使用されるのがNTPサーバです。NTPサーバを用いると、時刻を同期させることが重要な交通機関や金融機関の事故や大きなトラブルの回避が可能となります。

さらに、サイバー攻撃に対するセキュリティ向上や、データを活用したビジネスの信頼性を高めるためにも、時刻同期は必要とされています。

本記事では、システム開発において重要なNTPサーバの役割と導入のメリットについて詳しく解説します。

NTPサーバとは？

NTPは、Network Time Protocolの略です。ネットワーク経由で接続された機器同士を同期させる目的で使用する通信規格のことを指します。

NTPサーバはタイムサーバとも呼ばれ、セシウム原子時計など信頼できる時刻ソースから精度の高い時刻を取得すると同時に、ネットワークで繋がった他のサーバに時刻情報を提供する仕組みを持ちます。

システムの構成機器がNTPサーバに時刻情報のリクエストを送った際に生じるわずかな時刻のずれはサーバ側で補正され、時刻を精密に同期できるようになっています。

なお、インターネット上には研究機関や通信事業者が公開するオープンなNTPサーバがあり、誰でも無料で利用することができます。

NTPサーバの階層構造

インターネット上に存在するNTPサーバは複数の階層構造で構成され、連携して動作します。

階層の最上位にあるサーバは国立天文台の原子時計やGPS衛星などで厳密に規定した時刻情報を直接取得し、それを下層のサーバへ提供します。情報を受け取ったサーバは、同じ階層のサーバやさらに下層のサーバとも接続しており、それぞれの時刻を比較して遅延を防ぎます。

この仕組みにより、ひとつのサーバで遅延が生じたとしても、他のサーバで補完して時刻を正しく導き出すことが可能となっています。

このように、複数のサーバで相互に時刻情報を監視し、厳密な管理を実現しているのです。

NTPサーバの重要性

システム開発を行う上で時刻の管理ができていない場合、運用上さまざまなトラブルが発生します。例えば、ファイルサーバ上に保存されたファイルに対して、別のクライアント端末から操作を加える場合を考えます。

ファイルを保存しているサーバの時刻に対してクライアント端末の時刻が遅延すると、時刻を指定した操作が誤作動したり実行されない可能性があります。

他にも、構成する機器同士の時刻が異なると、正しいログデータが取得できないケースがあります。

場合によっては、Webアプリケーションへのログインができなくなったり、証明書を利用した認証が失敗する事態も生じるなど、トラブルの発展につながりかねません。

つまり、開発したシステムの安定性を担保するためにも、適正な時刻でシステム全体が運用できていることが重要です。

公開NTPサーバと自社専用NTPサーバの違い

一般的に業務で使用するパソコンでは、自動的に時刻が補正されるため、同期を意識しなくても問題ありません。通常は公開サーバに接続する設定が適用されているからです。

一方、厳密な時刻同期が求められるシステムを開発する場合は公開サーバの利用はおすすめできません。その理由は、公開サーバにアクセスが集中して接続できないため時刻同期に失敗し、時刻の管理ができないケースがあるためです。

また、ビジネス上の機密情報を扱うシステムの場合には、セキュリティ面から外部への接続を避けなければなりません。このような外部のネットワークに接続できない場合に用いられるのが自社専用のNTPサーバです。自社のローカル環境下にサーバを構築し、時刻の管理を行います。

これにより、システムの安定稼働とセキュリティ強化だけでなく、トラブル発生時の原因調査を迅速に行うことも可能となります。

NTPサーバを構築するメリット

NTPサーバを構築して時刻情報を高い精度で同期することにより、以下のようなメリットがあります。

システムのセキュリティ強化

作業者がシステム端末にアクセスした際の時刻や、防犯カメラなどの動画データの時刻はサイバー犯罪防止のための重要な証拠となります。厳密な時刻でシステムを運用することは、システムログの監視および改ざん防止のためにも有効です。

システム運用に関しては、ネットワーク障害が発生した際のタイムスタンプが重要です。システム構成機器の動作ログ時刻と実際に障害が発生した時刻が一致しない場合、障害の原因調査が困難なためです。

加えて、近年では公開サーバを悪用して特定のWebサイトに大量のリクエストを送信するDDoS攻撃も増加しています。サイバー攻撃を未然に防ぐ観点からも、自社専用サーバを構築する事例が増えています。

システム運用の信頼性向上

確度の高い時刻情報は、企業間の取引履歴として重要な証拠となります。企業間の取引において、システム上の時刻が誤っていると決済や受発注の取引が失敗してしまうケースもあります。

顧客への広報など業務時刻と合わせたシステム運用をしている場合には、誤った時刻で顧客に案内を送付してしまう可能性もあります。

NTPサーバを構築して厳密にタイムスタンプを記録できる環境を整えることは、システムトラブルの未然防止につながり、結果として企業の信頼性の向上にも貢献します。

システム運用の生産性向上

DX推進が進められ、データを活用する経営が行われる現代では、日々大量のデータを扱う必要があります。これらのデータをビジネスに活用する上で、自動化による生産性向上が課題となっています。

ビジネスに関する機密データをサーバ上で管理する場合、サーバは外部ネットワークから遮断され、公開NPTサーバは利用できません。時刻補正を手作業で実施するケースもありますが、管理コストが発生する上、ヒューマンエラーにより時刻の厳密性が失われるリスクもあります。

自社専用のNTPサーバがあればセキュリティを確保しつつ時刻管理の業務負担を軽減し、生産性を高めることが可能です。

NTPサーバ構築のポイント

自社専用のNTPサーバを構築する際は、サーバ端末の設置とサーバOSの構築を行い、設定後はサーバの運用と管理を行います。

サーバ端末が時刻情報の受信に用いる専用アンテナや専用回線の設置工事が必要なケースも多いため、導入コストについてはメーカーに詳細の確認が必要です。

市販されている製品には、本体とGPSアンテナが一体化された省スペース設計のものや、サーバと同じネットワークにある機器の監視機能を持つものもあります。

自社のシステム運用環境に応じてサーバ端末の必要な機能を検討し、導入を進める必要があります。

まとめ

NTPサーバは、システムのセキュリティと安定性を向上させるとともに、DX推進によるデータ活用を促進させるためにも重要な役割を担っています。

本記事の内容を参考にして、自社のシステム運用にとって最適なNTPサーバの利用方法を検討してみてください。

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