PoC(Proof of Concept、概念実証)とは、新しいアイデアの実現可能性や課題を解決する効果について検証する取り組みです。
この「PoCのロードマップ」シリーズでは、自社に新しいSFA(営業管理システム)を導入する企業があると想定し、順を追ってPoCの進め方について解説していきます。
本記事では、「第7回 / 調達したリソースをもとに実証を進めよう」で説明した実証内容を実施した結果、得られたデータを基にPoCを評価する方法について解説します。
なお、PoCを実施する上で理解しておくべき基礎知識は下記の記事で詳しくまとめております。「PoCについてより詳しく知りたい」「PoCという言葉は知っているけど詳細までは分からない」という方は、まずこちらの記事をご覧ください。
PoCプロジェクトの実証結果の評価の仕方
PoCプロジェクトの実証が完了した後の評価では、事前に決めた数値目標に対してどのような結果が得られたかを確認します。
PoCの対象によって設定する目標は異なりますが、例えば、生産性の向上を目指すプロダクトの場合に「ある業務にかける時間を20%削減する」という目標を設定していたとします。
この場合、PoCプロジェクトで実施する施策の中に業務時間の計測が設定されているはずですので、その結果がPoC実施前と比較して20%削減という数値を達成したかどうかを確認します。
PoCの中では、同様の数値目標が複数設定されていることもありますので、それぞれの目標の達成度合いを確認し、最終的にそのプロダクトの開発や導入を進めるかどうかを判断します。
PoCを進める上では、当初設定した数値目標以外にも、実証のプロセスを進めていく中で初めてわかる評価ポイントが出てくることもあります。
例えば、当初想定していなかった運用上の課題や、実証に参加したユーザー目線での問題点などです。
PoCの数値目標を全て達成していた場合でも、これらの課題は導入にあたって対応しなければならないため、数値だけに捉われずPoCの結果を総合的に評価することを心掛けてください。
SFA導入のためのPoCの評価の仕方
本シリーズで想定しているSFA導入のPoCプロジェクトの数値目標は以下のようなものでした。
属人化を防げるか検証するための数値目標
・営業業務の履歴の登録率80%以上
・担当者変更による業務引き継ぎ時の教育時間50%削減
・営業メンバーおよびアシスタントメンバーからのフォロー頻度50%増加
営業活動を効率化できるか検証するための数値目標
・商談件数50%増加
・見込顧客の成約率30%増加
・契約受注までのリードタイム50%削減
まずは、実証で得られたデータをもとに、これらの目標数値が達成できたかどうかを確認します。
その結果、「契約受注までのリードタイム50%削減」という項目だけが未達成で、他の目標数値は全て達成できていました。
このように達成できていない項目がある場合、その原因と対策法について考えるために、原因がSFAそのものにあるのか、あるいは実証に参加したメンバーや組織にあるのかを検討します。
今回のPoC対象チームの取り扱っている製品は、実証期間中に品質上の問題が発生したため、リードタイムの短縮には限界があったようでした。
これらの結果より、今回のPoCでは対象のSFAに属人化を防ぎ、営業活動を効率化できるという効果が見られたため、SFAの導入を推進することが決まりました。
まとめ
PoCは新しいアイデアを実際の環境で検証し、プロダクト開発やシステム移行を成功に導くための重要なプロセスです。
本記事では、SFA導入のためのPoCプロジェクトを例として、PoCを実施した結果の評価方法について説明しました。
今回の記事で「PoCのロードマップ」シリーズは終わりですが、最後に番外編としてPoCでよくある失敗パターンについて解説した記事もご用意しました。「番外編 / PoCがうまくいかないパターンを事前に確認しておこう」をぜひご覧になってみてください。
また、PoCにおける評価指標には具体的にどのようなものがあるか解説した記事が「PoCの評価指標を技術・ビジネスの両面から解説」です。こちらもぜひご覧になってみてください。
「まずはPoCついてざっくりと理解したい」という方には、当社で作成した「DXデジタルトランスフォーメーションを成功させるためのPoC(概念実証)進め方と実践の手引き」の資料がおすすめです。下記のリンクからダウンロードしてみてください。