こんにちは!
ファンリピートの佐藤です。
システム開発において重要なスキルの一つがデータベースです。
IT業界にはデータベースの専門家として収入を得ている人も多くいます。
しかし、ノーコード・ローコード開発でもデータベースの技術や知識が必要と言われますが、実際にはどの程度必要なのでしょうか?
今回はそれを整理していきます!
※各ローコードのプラットフォームで若干差はあるので、その点だけご考慮ください
データベースとは?
データベースをご存知の方も多いと思いますが、本題に入る前にデータベースとは何なのか軽く説明します。
データベースとは「データの倉庫」のようなものです。
大量の情報を整理して保存できるので、プログラムを使って情報を追加、変更、検索できます。
例えば、お店の商品リストや顧客情報を一箇所にまとめて管理できます。
これにより、必要な情報を簡単に見つけたり、更新できます。
従来の開発とローコード開発の比較
ローコード開発では、ソースコードを使用する従来の開発に比べてデータベースに関する知識の要求が低くなります。
どれくらい違うのでしょうか?
大まかに表にまとめてみました。
項目ごとに説明していこうと思います。
クエリ言語
クエリ言語とは、データベースに対して情報の取得や操作を指示するための言語を指します。SQL(Structured Query Language)が最も一般的なクエリ言語で、データの検索や更新、削除などの操作します。
従来の開発では、データベースから必要な情報を取得したり、複数のテーブルから関連データを一度に取得するために、複雑なSQLクエリを書く必要があります。
クエリというのは、データベースに対してデータを操作するための命令文のことを指します
これには、サブクエリ(クエリの中に含まれる別のクエリ)や、ウィンドウ関数(データの一部を操作する特殊な関数)、トランザクション管理(複数の操作を一つのまとまりとして管理し、途中で失敗した場合にはすべての操作を元に戻す機能)などが含まれます。
例えば、データベースから2020年1月1日以降に雇用され、現在もアクティブな従業員の情報を取得するようなSQL文は以下のようになります。
SELECT e.employee_id, e.first_name, e.last_name, d.department_name, AVG(s.salary) OVER (PARTITION BY d.department_id) AS avg_salary
FROM employees e
JOIN departments d ON e.department_id = d.department_id
JOIN salaries s ON e.employee_id = s.employee_id
WHERE e.hire_date > '2020-01-01'
AND e.status = 'active'
ORDER BY d.department_name, e.last_name;
しかし、ローコード開発では、多くのプラットフォームがデータの追加をドラッグ&ドロップの操作で簡単に行えるようにしているため、複雑なSQLクエリを書く必要がありません。
データベース設計と正規化
データベース設計は、情報を効率的に保存・管理するための構造を作ることです。正規化は、データの重複を避けて一貫性を保つためのルールです。
従来の開発では、データが重複しないように複数のテーブルに分ける「正規化」を行い、テーブル同士の関係を考慮した設計が求められます。ごくシンプルな正規化の例として以下のようになります。
これは、データの一貫性を保ち、効率的に管理するために重要です。
また、データのアクセス速度を上げるために、パフォーマンスを考慮したデータモデリングも必要です。
一方、ローコード開発では、データモデルの設計が簡素化されており、プラットフォームが自動的に最適化することが多いです。
ユーザーは基本的なテーブル作成と、テーブル間のリレーション(関係)の設定をするだけでよいです。
データベースパフォーマンスのチューニング
データベースパフォーマンスのチューニングは、データの読み書きを速くし、システムの効率を高めるための最適化作業を指します。
従来の開発では、データへのアクセスを速くするために、インデックスを設計して検索を高速化し、クエリ(データベースへの命令)を最適化する技術が必要です。インデックスとは、データベース内に目次のようなものを設置し、データを検索する際にその目次を利用して効率的に検索する方法です。
また、データを一時的に保存して高速化するキャッシュを使用することもあります。これらのチューニング作業は、データベースの専門知識を持つエンジニアによって行われます。
一方、ローコード開発では、多くのプラットフォームがこれらのパフォーマンス最適化を自動的に行います。ユーザーは、基本的な設定するだけで、複雑なチューニング作業を意識する必要がなくなります。これにより、専門知識がなくても効率的なアプリケーションを作成できるようになります。
トランザクション管理
トランザクション管理は、一連のデータベース操作をまとめて一つの単位として扱い、全てが成功するか、全てが失敗して元に戻るようにする仕組みです。
従来の開発では、例えば銀行の振込処理のように、複数の操作をまとめて一貫性を保つために高度なトランザクション管理が必要です。これにより、一部の操作が失敗した場合に全ての操作を元に戻して、データの整合性を保つことができます。
しかし、ローコード開発では、基本的なトランザクション制御がプラットフォーム側で自動的に処理されるため、ユーザーが個々の操作を細かく管理する必要はありません。これにより、専門的な知識がなくても、安全にデータを操作できるようになっています。
例えば、オンラインショッピングの注文処理でも、複数の在庫更新や支払い確認が自動的に一貫して行われます。
バックアップとリストア
バックアップは、データベースのコピーを保存することで、リストアはバックアップからデータを復元することです。
これにより、データの喪失や破損時にデータを元の状態に戻せます。
従来の開発では、定期的にデータベースのバックアップを取得し、その保存場所を管理するための詳細な知識が必要です。
また、データが失われたり破損した際には、リストア手順に従ってデータを復元する必要があります。これには専門的なスキルが要求されます。
一方、ローコード開発では、プラットフォームがバックアップとリストアの機能を提供していることが多く、ユーザーは簡単な操作でバックアップを取得し、必要な時にデータの復元ができます。
これにより、技術的な知識が少なくてもデータの保護と復元が可能です。
セキュリティとアクセス制御
セキュリティとアクセス制御は、システムやデータベースへの不正アクセスを防ぎ、正当なユーザーだけが適切なデータにアクセスできるようにするための仕組みです。
従来の開発では、開発者がユーザー認証(ユーザー名とパスワードの確認)、ロールベースのアクセス制御(ユーザーの役割に応じてアクセス権を設定)、SQLインジェクション対策などのセキュリティ対策を細かく実装する必要があります。
SQLインジェクションは、攻撃者が悪意のあるSQLコードをデータベースクエリに挿入し、不正にデータを操作または取得する攻撃手法です。
一方、ローコード開発では、これらのセキュリティとアクセス制御の機能がプラットフォームに組み込まれており、開発者はそれらの機能を簡単に設定するだけで安全なアプリケーションを構築できます。これにより、専門的なセキュリティ知識がなくても、システムの安全性を確保しやすくなります。
まとめ
データベースにおいて、ソースコードを用いた従来の開発と比べると、ローコード開発で必要なスキル・知識は確かに少ないです。
しかしながら、全く必要ないわけではなく、リレーションや基本的なクエリなどの理解がローコード開発でも求められます。そして、システム開発に関わる場合、ローコード開発でもデータベースの知識があればあるほど開発が捗ることは事実です。
なので、開発の手法に関係なく、データベースの知識は積極的に身につけていきたいですね。