PoC(Proof of Concept、概念実証)とは、新しいアイデアの実現可能性や課題を解決する効果について検証する取り組みです。
この「PoCのロードマップ」シリーズでは、自社に新しいSFA(営業管理システム)を導入する企業があると想定し、順を追ってPoCの進め方について解説していきます。
本シリーズでSFAの導入を想定するのは、次のような背景を持つ企業です。
・BtoBでビジネスをしている社員200名の機械部品メーカー
・自社製品は自動車、家電、医療機器、航空宇宙など、幅広い分野で使用されている
・営業メンバーは20名で、業界ごとに3〜5名のチームで構成されている
・営業部門の課題は、担当者が属人的な営業をしているため営業プロセスが不透明なことと、チーム間の情報共有が不十分であること
・今後、営業部隊の人員拡大を計画しており、営業担当者の経験や知識の共有を促すためにSFAの導入を試みている
シリーズ最初となる本記事では、対象となるSFAを導入するPoCプロジェクトの前提条件として、SFAとは何か、SFA導入にPoCがなぜ必要かについて説明します。
なお、PoCを実施する上で理解しておくべき基礎知識は下記の記事で詳しくまとめております。「PoCについてより詳しく知りたい」「PoCという言葉は知っているけど詳細までは分からない」という方は、まずこちらの記事をご覧ください。
SFAとは
本シリーズでPoCの対象とするプロダクトは、営業管理システムであるSFA(Sales Force Automation)と呼ばれるものです。
企業の営業部門で管理されている、営業活動に関するさまざまな情報をデータとして蓄積・分析するためのツールです。
SFAは営業活動を支援する多様な機能を持ち、営業メンバーが担当する各商談の進行度合いを確認できたり、営業メンバーの日々の行動管理、自社で取引がある顧客管理なども可能です。
さらに、これまで営業部門のメンバーが個人で管理していた営業情報をチーム全員で共有することにより、個人の力量に依存せずにチームでの営業活動を進めることが可能となります。
SFA導入にPoCが必要な理由
営業活動の生産性向上や業務改善に貢献するSFAですが、実際に新しく導入する場合、営業部門のニーズに合致しないものが導入されてしまうケースがあります。
一般的にSFAを自社に導入する場合、企業内の情報システム部門が営業部門の要望を確認して外部ベンダーに提案書や見積書を作ってもらい、自社にとって最適なシステムを選択します。
このとき情報システム部門は、営業部門の日々の活動詳細が理解できていないことが多く、SFAの選定では営業部門から出てきた要望を全て満足するような多機能かつ複雑なSFAを導入してしまう傾向があります。
確かにこのようなSFAは、システムとしては性能も品質も高く、上手く使いこなすことができれば営業成績アップに貢献できるでしょう。
しかし現実には、営業部門はSFAを使いこなすことができないために業務効率も向上せず、最悪の場合、コストをかけて導入したのに誰にも使われないシステムとなってしまいます。
そこで、SFAを導入する際にPoCを実施することで、現場の営業メンバーが本当に必要としている営業支援機能を小規模に検証し、SFAを導入した後も必要な機能を使いこなして業績向上に貢献することが可能となります。
PoCプロジェクトの実施ステップ
SFAを導入する際のPoCプロジェクトは以下のようなステップで進めます。
- PoCの目的を決める
- PoCの数値目標を決める
- PoCで実施する施策を決める
- PoCのスケジュールを立てる
- PoCの予算を決める
- PoCのリソースを調達する
- PoCの実証を進める
- PoCの実証結果を評価する
「PoCのロードマップ」シリーズでは、上記のステップごとに検討すべき内容や注意点を説明していきます。
今回はSFAを対象にして説明しますが、新規事業開発やDXプロジェクトなど、FA導入以外のPoCでも、これらのステップにしたがってPoCを進めれば成功する可能性は高くなるため、ぜひ参考にしてください。
まとめ
PoCは新しいアイデアを実際の環境で検証し、プロダクト開発やシステム移行を成功に導くための重要なプロセスです。
本記事では、SFA導入のためのPoCプロジェクトを「PoCのロードマップ」で解説するための前提条件について説明しました。
「PoCのロードマップ」の次回の記事では、PoCプロジェクトの最初のステップとして目的の設定について解説します。「第1回 / まずはPoCの目的を設定しよう」をぜひご覧になってみてください。
「まずはPoCついてざっくりと理解したい」という方には、当社で作成した「DXデジタルトランスフォーメーションを成功させるためのPoC(概念実証)進め方と実践の手引き」の資料がおすすめです。下記のリンクからダウンロードしてみてください。