PoC(Proof of Concept、概念実証)とは、新しいアイデアの実現可能性や課題を解決する効果について検証する取り組みです。
新製品の開発初期に、プロダクトの有効性や実現性を確認できる重要なプロセスである一方、PoCの目的や検証内容が曖昧なままスタートしてしまい、失敗に終わるケースが散見されます。
本記事では、PoCが失敗してしまうよくあるパターンと、その理由について解説します。
また、PoCを実施する上で理解しておくべき基礎知識については、下記の記事で詳しくまとめております。「PoCについてより詳しく知りたい」「PoCという言葉は知っているけど詳細までは分からない」という方は、まずこちらの記事をご覧ください。
パターン1:検証内容が不明確なままスタートしてしまった
PoCで検証する内容を最初に決めておかないと、そのPoCプロジェクトは失敗する可能性が高いです。
新製品を検証するときに重要なのは「新製品をリリースする際、市場で受け入れられるかどうか」「業務システムを導入する際、業務の効率化が進められるかどうか」など、対象とする新製品の実現性や有効性を確認することです。
この問いに対する検証方法や判定基準を決めずに、あるいは曖昧にした状態でPoCを始めた場合、得られた結果をどう扱ってよいかわからなくなります。
PoCでは、プロトタイプをユーザーに利用してもらって検証を進めますが、検証したい項目が何かによって、プロトタイプに盛り込むべき要件が変わってきます。
いきなり複数の新しい機能を一度に検証しようとしても、検証が複雑になるため時間がかかり、クイックな検証ができるPoCのメリットが失われてしまいます。
PoCを実施する前に検証項目を明確にし、得られた結果を確実に判断できるようにしましょう。
パターン2:関係者間での認識が共有できていなかった
PoCを実施する際には、ユーザー側とだけでなく、自社側においてもPoCの目的や検証内容を共有し、同じゴールに向かって進める必要があります。
まず、ユーザー側との認識の共有に関しては、現場の担当者の協力が得られない状態でPoCを進めてはいけません。PoC後の導入段階で、担当者がプロダクトに対して抵抗を感じ、導入が進まないケースがあります。
ユーザー側の管理者や決済者はPoCで手応えを感じていても、実際の現場の進め方や状況を理解しないままプロダクト開発を進めてしまうことがあるからです。
一方、自社側でもPoCで何を検証するか共有しておく必要があります。PoCで新しいプロダクトのどの機能を検証するのかが共有されていないと、得られた結果に対して的外れな判断をしてしまうかもしれません。
特に、PoCを実行する部門とは異なる部門から、PoC結果のネガティブな側面に指摘を受け、プロジェクトの進行が阻害されるケースには注意が必要です。
PoCにより検証する内容を明確に定義し、それを関係者間で共有することでPoCサイクルを確実に回すことができるようにしましょう。
パターン3:PoCを行うことが目的化してしまった
PoCは未知のアイデアの効果を検証するための重要なプロセスですが、これ自体が目的化して失敗してしまうパターンもよくあります。
検証する内容が曖昧な状態でスタートしたプロジェクトの場合、PoCの結果として見出した課題を思いつきの対応策でやり過ごすケースが出てきます。
これではPoCを何度繰り返したとしても、モグラ叩きのように課題をつぶすことに集中してしまい、そのプロダクトの本質的な有効性や実現性を検証することができません。
担当者としては、PoCのサイクルを回しながら課題を見つけて対策を実施できている実感を得られるかもしれませんが、PoCはただ単に数をこなせばいいというものではないのです。
「PoCをする目的は何か」「なぜPoCをやらなければならないか」という視点を忘れると、いつの間にかPoCをすること自体が目的になり、肝心のプロダクト導入に必要な検証が進まないケースがあります。
このような手段の目的化は気づかないうちにハマってしまうパターンなので、担当者とそのチームは常に意識しておくことが重要です。
まとめ
PoCは新しいアイデアを検証し、プロダクト開発を進めるために必要なプロセスです。しかし、PoCの実施は目的ではなく、新しいアイデアの価値を検証する手段に過ぎません。
本記事で解説した内容を参考にして、失敗しないPoCの進め方を理解し、プロダクト開発を成功に導いてください。
実際にPoCを進める場合に、実行ステップの具体的な内容を解説した記事が「PoCの進め方や注意点は?」となります。詳細を知りたい方はぜひご覧になってみてください。
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