最近では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い、これまでデジタル化されていなかった分野にも、デジタルツールや専用システムを導入するケースが増えています。
このような場合、事前にリスクを検証するためのプロセスである「PoC」を実施すれば、スムーズにシステム導入を実現することが可能となります。
本記事では、PoCを失敗することなく進めるためのステップと、PoCを進める上で注意すべき点について詳しく解説します。
PoCの重要性と課題
PoC(Proof of Concept、概念実証)とは、主に新製品や新サービスなどのアイデアを少数のユーザーに試してもらうことにより、「アイデアが本当に実現するのか」あるいは「ユーザーに受け入れられるのか」といった内容を検証するプロセスを指します。
PoCを行うことで、これから開発するプロダクトの成否を裏付けを持って予測することができます。さらに、PoCで洗い出した課題の対応策を踏まえてスムーズにプロダクト開発を進め、トラブルを最小限に抑えて本番導入につなげることが可能になります。
とくに、今までに経験のない分野でプロダクト開発をする場合、いきなり大規模な予算をつぎ込んで開発を行う前に、小規模な予算でPoCを実施することにより、プロダクト開発失敗の可能性を減らすこともできます。
中でもDXのような難易度の高いプロジェクトを実現し、時代のニーズに素早く対応することが求められる場面では、PoCのステップを通して現場の理解を得ながらプロジェクトを進めることが必要不可欠です。
このようにPoCは非常に重要なプロセスでありながら、プロダクト開発を担当するプロジェクトマネージャにPoCの経験があまりなかったり、関係者がPoCの適切な進め方を理解できていないことも多く、時間をかけてPoCを実施しても十分な効果が得られないケースが散見されます。
プロダクト開発を成功させるためのPoCは、どのように進めれば良いのでしょうか?以下に、PoCを成功に導く4つのステップと、注意すべき3つのポイントを紹介します。
PoCの4ステップ
1.目的の決定
まず最初に、自分たちがPoCを行うことで、どのような結果を得たいかを決定し、関係者間で共有します。プロダクトを導入するにあたり、PoCで明確にしたい内容は対象となるプロダクトやユーザーによって変わります。
例えば「現在ユーザーが抱えている課題を解決できるのか?」「ユーザーにとって費用対効果は十分に得られるのか?」「ユーザーはアイデアを受け入れて使いたいと思うのか?」などを検証することが多いです。
PoC実施後のプロダクト開発の方向性を判断できるように、具体的な目標値を設定しておくことをおすすめします。
2.検証方法の決定
PoCの目的が定まったら、つぎはPoCで使用するプロダクトの機能を明確にして、検証方法を決めます。プロダクトの機能を決める上で大切なことは、PoCの目的を達成するために必要最低限の機能に絞ることです。
最初からたくさんの機能の検証を行おうとすると、重要な項目の検証ができないまま時間切れとなるリスクがあります。また、得られた結果に複数の機能が関わっているため、原因を正確に分析することが難しくなってしまいます。
時間や予算の制約はありますが、できるだけ、後から変更することが難しいようなクリティカルな機能の検証を優先してください。
複数の機能の検証を行いたい場合は、次回以降のPoCのステップで検証を進めるように計画しましょう。
3.実証
PoC用に作ったプロダクトを実際にユーザーに使用してもらい、検証に必要なデータを収集します。このとき、導入するプロダクトを本番に近い環境で検証するため、現場で使用するユーザー本人に操作してもらうようにします。
必ずしも一度のPoCで多数のユーザーに参加してもらう必要はありませんが、可能なら、複数のユーザーに使用してもらえると良いでしょう。
ユーザーによって使い方や操作性にばらつきがないか、使い勝手や印象が異なっていないか、などを確認することができます。
4.結果の検証
実証ステップでデータが収集できたら、分析して検証を行います。具体的には、当初設定したPoCの目的が達成できたか、自分たちが収集しようと考えていたデータが得られたか、などを確認します。
検証の結果、目的を達成できていて望ましい結果が得られた場合はPoCを完了し、引き続きプロダクトの開発を進めて導入プロジェクトを推進します。
もしPoCがネガティブな結果となった場合は、原因を特定して対策を検討し、次回のPoCやプロダクト開発の内容に反映します。場合によっては、導入プロジェクトの延長や中止も検討する必要があります。
PoCを進めるときの注意点
クイックに実施する
PoCを実施する際は、なるべく予算や時間を掛けずにスピーディに行いましょう。
最初から色々な項目を検証しようとして規模の大きいPoCを計画してしまうと、結果を検証して改善するためのPDCAサイクルを何度も回すことが難しくなり、一発勝負の検証になってしまうリスクがあります。
さらに、プロダクトのアイデアを理解していないユーザーを巻き込むための交渉・説得や、承認を得なければならない関係者が増えるなど、PoCの準備や実施にも多くの時間を費やすことになってしまいます。
まずはプロダクトの機能も対象ユーザー数も絞り、何回かのPoCに分けて検証を行う方が、結果的に効率よく導入プロジェクトを成功に導くことができます。
PoCを目的化しない
PoCは対象プロダクトの有用性を、開発工程の早い段階で検証するための手段であり、PoCを実施すること自体は目的ではありません。
PoCを実施すること自体が目的になってしまうと、プロダクトを開発する上で検証すべき内容が曖昧になり、開発中のプロダクトのどこを改善すべきか判断できなくなる恐れがあります。
PoCの実施を担当するプロジェクトマネージャは、自分の上司や関係者からPoCを早期に遂行するよう求められがちです。
プレッシャーに晒される場面もあると思いますが、PoCで検証すべき内容を常に念頭に置いて、焦らず確実にステップを進めていきましょう。
本番運用と条件を揃える
PoCは可能な限り、導入する環境と同じ条件で検証を行いましょう。
PoCで検証が完了して無事に本番導入が決定したとしても、それでプロジェクトは終わりではありません。プロダクトを導入した後、実際に成果が挙げられるかどうかが重要です。
もしもPoCの環境と本番環境が大きく異なる場合、PoCで良いデータが得られたとしても、導入後に同じ結果が得られずにプロジェクトが失敗に終わる可能性があります。
そのため、実証ステップでは実際に現場で作業をする人にプロダクトを触ってもらい、そのときの違和感や満足感、不満感などを確認しておくことが大切です。導入した後のことも見据えてPoCの条件を整えましょう。
まとめ
PoCは新しいプロダクト開発を行う上で重要なプロセスです。とくにDXを推進する場合、PoCの実施を通して導入するプロダクトの実証を何度も行うことで、プロジェクトを後戻りさせずに成功に導くことが可能となります。
プロダクト開発を確実に成功させるために、本記事で解説した4つのステップと3つの注意点を参考にしてください。
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